カワバタモロコの保護

カワバタモロコカワバタモロコ Hemigrammocypris rasborella は、コイ科ダニオ亜科カワバタモロコ属に分類される、日本固有の淡水魚です。
本州の中部地方(静岡県瀬戸川水系)以西から岡山県の瀬戸内海側までと、四国の瀬戸内海側(徳島県・香川県)および九州北西部(福岡県・佐賀県)に分布します。
平野部や丘陵地の浅いため池・沼・用水路などに生息しますが、香川県では丘陵地の浅いため池に集中して生息します。止水域で、抽水・浮葉・沈水植物が存在する環境を好みます。

産卵期は5月中旬~8月中旬で、湿地帯の浅い水たまりなど、高水温になる環境で産卵します。
数個体の雄に追尾された雌が水草や水没した雑草などに卵を産みつけます。この時期の雄は、大変鮮やかな黄金色を呈します。卵の径は約1mmで、水温25℃前後では約一昼夜で孵化します。
満1年で成熟し、自然下での寿命では1~3年(ただし産卵に参加したものは、その後寿命を全うする)と考えられています。

食性は雑食性で、付着藻類や水生小動物などを食べます。
全長は3~7cmで、体側には暗色縦帯があり、その上縁は金色に光ります。側線は不完全で、前方のうろこ5~15枚に存在します。口は斜め上を向いて開き、口ひげはありません。

本種が生息する平野部や丘陵地の浅いため池・用水路・小川などは人間活動の影響を受けやすく、ため池の埋め立て・改修・浚渫工事、また用水路・河川の改修・護岸工事などによる生息地改変、耕作の放棄等による環境の悪化のため、激減しているものと考えられています。
加えて、オオクチバス・ブルーギルの違法放流による捕食圧増大による絶滅、サギ類・カワウなどによる捕食、渇水によるため池の干上がりによる生息数減少も問題となっています。
レッドリストでは2008年現在、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いとされる、絶滅危惧ⅠB類(環境省)、絶滅危惧Ⅰ類(香川県)にそれぞれ指定されています。

本会は、香川県で絶滅寸前となっている本種の保護に貢献したいと考え、東讃地域の本種が生息している3地点のため池の定期調査を実施しています。あわせて、日本魚類学会自然保護委員会「生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン(2005年)」に基づき、生息地周辺の農家の方が所有する、5地点の農業用灌漑池を利用して、生息環境の悪化等によって本種の生息が懸念されるため池(同一水系)から個体群を移殖し、本会に所属する香川県希少野生生物保護推進員の指導の下で保全研究を行っています。