ヤリタナゴ+アブラボテ+マツカサガイの保護
ヤリタナゴ Tanakia lanceolata は、コイ目コイ科アブラボテ属に分類される淡水魚の一種です。
全長6~10㎝、北海道と九州南部を除く各地に分布しています。平野部の細流や灌漑用の水路、湧水などのやや流れのある所を好みますが、湖・池沼の岸辺の沈礁や杭などの周辺にも生息します。雑食性で付着藻類や小型の底生動物などを食べます。
タナゴ類としては体高が低く、近縁種とされるアブラボテなどに比べると全体に細長く、この細い体つきから
「槍」タナゴの名前が付けられたと思われます。側線は完全で、口角に長い一対の口ひげを持ちます。
タナゴ類によく見られる肩部の暗色斑はなく、体側後半部の暗色縦条も細く不鮮明です。
産卵期の雄の体側前半部は赤紅色を帯び、えらぶたと胸鰭の上方ではそれが特に濃くなります。また背鰭の前上縁と尻鰭の縁辺の朱色も濃さを増します。産卵期は3~8月で、雄はマツカサガイに雌を誘導し、雌は貝の出水管に産卵管を瞬間的に挿入して数十粒の紡錘形の卵を産みつけます。
孵化直後25日程度、全長10㎜の頃、貝から泳ぎ出ます。
近年では河川の改修などによる生息地の減少のほか、オオクチバスやブルーギルなどの外来種による食害などによって、香川県では著しく減少し、絶滅危惧Ⅰ類に指定されています。環境省のレッドリストでも準絶滅危惧種として指定されていて、姿が見られない魚になりつつあります。
アブラボテ Tanakia limbata は、コイ目コイ科アブラボテ属に分類される淡水魚の一種です。和名のアブラ(脂)は本種の体色に由来し、ボテはタナゴの俗称です。
全長6~10㎝、体高は高く、扁平します。口ひげは1対で側線は完全。体色はオリーブ色で特にオスで顕著です。タナゴ類によく見られる肩部の暗色斑はなく、体側後半部の暗色縦条も細く不鮮明です。
本種は体色が渋いこげ茶色から朱色になり、背鰭と臀鰭に黒と朱色の帯が浮かび上がる独特な婚姻色を呈します。体形も他の属のタナゴよりも厚く、一対のヒゲをたくわえています。そのためか、本種は煌びやかな他のタナゴと違って叩き上げの武士を思わせます。
性格も荒くて特に産卵用の淡水二枚貝を入れるとオスはその周りに縄張りを張り、他個体を盛んに追い払います。本種の産卵期は3~7月で、二枚貝の鰓葉腔に細い管状の産卵管を差し込んで産卵を行ないます。産卵期の雄の体側前半部は赤紅色を帯び、えらぶたと胸鰭の上方ではそれが特に濃くなります。また背鰭の前上縁と尻鰭の縁辺の朱色も濃さを増します。孵化直後25日程度、全長10㎜の頃、貝から泳ぎ出ます。
マツカサガイ Inversidens japanensis は、イシガイ目イシガイ科マツカサガイ属に分類される日本固有の淡水二枚貝の一種です。
殻長40~60㎜、東北から九州にかけて広く分布、河川や農業用水路などで、砂底~砂泥底の小石などがある水底に生息しています。
マツカサガイの貝殻は表面にボコボコとした波状の肋が見られる事が多く、黒色または濃褐色の殻皮で覆われています。また、貝殻の内側には真珠光沢が見られます。
香川県では、局限したところで見つかっていますが、以前からそこにいた在来種であるのか、淡水魚飼育のために放流された他県産のものかは分かっていません。
鰓葉に蓄えられた卵はグロキディウム幼生に成長した後放出され、グロキディウム幼生はヨシノボリ類などの体表に付着し寄生生活を経て親と同様な形態に変態し底生生活に入ります。
河川の下流域や平野部の用水路などの緩やかな流れで底質が砂泥底で水質の良い場所は多くの水域で破壊されてしまったため、マツカサガイの生息は危機的な状況です。また近年の日本産淡水魚飼育ブームに伴う業者による採集圧も脅威となっています。
本会は、香川県で絶滅寸前となっているヤリタナゴ、アブラボテ、マツカサガイの保護に貢献したいと考え、生息地域である地元コミュニティ団体と協力して3地点の生息地の定期調査を実施しています。あわせて、乱獲による本種の絶滅を防ぐために、警察と連携を図っています。