ニッポンバラタナゴ+シマヒレヨシノボリ+ドブガイの保護

ニッポンバラタナゴ


ニッポンバラタナゴ Rhodeus ocellatus kurumeus は、大阪府、奈良県、岡山県、香川県と九州中北部のみに分布する日本固有亜種です。
平野部の護岸されていない水路、ため池といった自然性の高い止水域または緩流域に生息しますが、香川県ではため池に集中して生息します。
かつて瀬戸内平野では広く見られましたが、別亜種であるタイリクバラタナゴ Rhodeus ocellatus ocellatus との競合ならびに交雑、浚渫・コンクリート護岸への形状変更などの生息地の改変、ため池の埋め立てなどの生息地の消失、ブラックバス・ブルーギルの違法放流による捕食圧により、瀬戸内地方では、大阪府と香川県、岡山県の山麓部などのわずかなため池を除いて全滅しました。
現在、大阪府と香川県においてはため池の管理放棄により生息環境が悪化しており、また小集団化に伴う遺伝的多様性の消失と近親交配による遺伝的劣化が問題となっています。

形態は、体が側扁し、体高は高く、輪郭は菱形に近く、口髭はありません。全長は最大で約5cm近くになり、約1年で成熟し、寿命は約2年です。側線は不完全で側線有孔鱗数は0~5、鰭条数は背鰭分岐軟条が9~12、臀鰭分岐軟条が9~12、肩部に斑紋を持ちませんが、体側上に暗青色の縦帯が存在します。
未成魚では背鰭前縁に明瞭な黒斑が認められますが、雄の場合、成熟に伴い消失します。

産卵期には雄では体全体が赤褐色を帯び、腹部外縁と腹鰭は黒色になります。
雌は白色の長い産卵管が伸長します。
近縁種であるタイリクバラタナゴとは側線有孔鱗数(タイリクバラタナゴでは2~7)、腹鰭前縁部の白色帯の有無、婚姻色(タイリクバラタナゴでは虹白色)によりある程度区別は可能ですが、西日本の各地においてニッポンバラタナゴとの交雑が進んでいます。

ドブガイ産卵期は3~9月で雌は、ドブ貝などの二枚貝に産卵します。卵は長径約3mmの洋梨型で、約3日で孵化します。
孵化仔魚は貝内で約1ヶ月過ごした後、泳出します。

香川県のレッドデータブック2004によると、本亜種の生息を確認したため池は33、移殖したため池は19、現在生息しているため池は28(うち移殖ため池13)と減少傾向を示しています。

産卵母貝となるドブガイも減少傾向を示しています。

ドブガイの幼生(グロキディウム)は底生魚のヨシノボリの鰭などに一時的に寄生し、その後、底生生活にはいります。ニッポンバラタナゴはドブ貝を「ゆりかご」として利用し、ドブガイは魚類を分布拡大のための移動手段として利用し、お互いに持ちつ持たれつの関係を保っています。

ニッポンバラタナゴを保護するためには、その産卵母貝となるドブガイも繁殖できる環境を保全しなければなりません。

香川県は、ニッポンバラタナゴの貴重な産地であり、その保護に貢献したいと考え、本亜種が分布する東讃地区2地点のため池の定期調査を実施しています。あわせて、農家の方が所有する3地点の農業用灌漑池を利用して、ブラックバス・ブルーギルの違法放流より、本亜種の生息が懸念される近隣のため池から、ニッポンバラタナゴ、産卵母貝であるドブガイを移殖(在来生態系に配慮した生息域内移殖)し、本会に所属する香川県希少野生生物保護推進員の指導の下で、保全研究を実施しています。


 保護保全活動

香川淡水魚研究会では、絶滅の危険性が高いため池のニッポンバラタナゴ個体群を保護池に移殖し、ニッポンバラタナゴ・ドブガイの生態観察、保護増殖の研究を行っています。
定期調査では、以下の項目について調査しています。
1.水質検査
・水温、PH、DO(溶存酸素量)、COD等測定
2.ニッポンバラタナゴの生態観察
・生息数調査(推定)
・体長測定
・産卵行動観察
3.ドブガイの生態観察
・体長測定
・ニッポンバラタナゴ産卵数計数
・ドブガイ妊卵調査
4.プランクトン調査
5.生物相調査


独立行政法人環境再生保全機構による活動評価

独立行政法人環境再生保全機構が、平成18年度に終了する助成活動で、活動形態が「実践」及び「知識の提供・普及啓発」で実践を伴う案件のうち、現地において評価が実施可能な活動19件から下記の14件(国内12件、海外2件)を選定し、外部有識者による第三者評価を実施しました。
本団体の評価は以下の通りでした。

<助成活動名>
 ニッポンバラタナゴ(Rhodeus ocellatus kurumeus)の保護
<活動概要>
 香川県東讃地区に分布する絶滅危惧種ニッポンバラタナゴの生息調査を高松工芸高等学校及び地元農家と協力して実施する。また、地域住民と連携して、オオクチバス防除認定を取得し、希少淡水魚類保護の観点から環境保全の先駆的な取組みを行う。
<評価結果>
評点:A(極めて高く評価できる水準・状況・結果である)
ニッポンバラタナゴの生息・生態調査と保護を目的とした活動で、拠点となるため池において、小規模ながら、外来種の影響を排除しつつ、産卵母貝の再生産、産卵親魚及び稚魚個体群の確保を重点に展開し、成果を挙げた事例として評価できる。
また、保護活動のあり方や地域の環境保全に配慮した取組みとして、全国的に汎用性のある貴重な活動として期待される。
一方、本種が安定して繁殖していくためには、外来種の影響を受けない生息地の拡大が求められるが、規模の拡大に伴って、各種利害関係者との調整の機会が頻出することから、今後、社会的合意形成の手法について十分な検討が必要であると思われる。

 

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