ここはどこ?わたしはだれ?タイリクバラタナゴの受難

タイリクバラタナゴ生態系被害防止外来種リストで、総合対策外来種(重点対策外来種)に掲載されるタイリクバラタナゴ。

重点対策外来種とは、国内に定着が確認されている生き物。重点対策種に対しては、大きな被害が予想されるため、各主体における防除や、遺棄・導入・逸出防止のための普及啓発など、総合的に行うことが必要と言われています。

タイリクバラタナゴによる被害とは、ニッポンバラタナゴとの交雑です!

中国大陸から連れてこられたタイリクバラタナゴは、コイ目コイ科タナゴ亜科バラタナゴ属に分類される淡水魚の一種です。全長6~8㎝、島嶼部をのぞく日本各地に分布しています。平野部の細流や灌漑用の水路などのやや流れのある所を好みますが、湖・池沼の岸辺の沈礁や杭などの周辺にも生息します。

ニッポンバラタナゴよりも大型になり、とりあえずは、腹鰭の前縁が白いことで判別が可能です。しかしながら、よく見ても、ニッポンバラタナゴ?タイリクバラタナゴ?と同定に悩むときがあります。2種の交雑個体ともなってくると、いや交雑してなくても、腹鰭の前縁が白くないものがいたり、有孔側線鱗数では区別できない場合も多く、外見上の特徴だけでは完全に見分けることは不可能と言っていいでしょう。

そもそもニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴは亜種関係にあり、形態は酷似しています。交雑もします!

今では、タイリクバラタナゴとニッポンバラタナゴの交雑が進んでいて、そのことがタイリクバラタナゴを総合対策外来種(重点対策外来種)にしているのでしょう。

皮肉なことに、段差障壁や堰などの河川横断物による水路ネツトワークの連結度低下のおかげで、交雑個体がどこまでも散っていくのを防げている側面もあり、ニッポンバラタナゴは水路ネットワークがほぼ遮断されたようなため池でひっそりと暮らしています。

しかし、そこにタイリクバラタナゴを放して、バラタナゴ回復に貢献しようとする人が現れています。ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴは似て非なるものなのです。この行為がニッポンバラタナゴ絶滅への加担となり、大問題になっています!

ドブガイの放流もいけません。タイリクバラタナゴの卵をもっている可能性があるからです。

結局のところ、ペットショップのお魚では純淡水魚類の生息回復にはまったく繋がらないのです。

ところで、どうやってニッポンバラタナゴ、タイリクバラタナゴ、雑種を見分けるのでしょうか?

それは遺伝子解析です。写真は電気泳動法による解析例です。お魚のヒレをちょっとだけカットして調べます。以前は、魚をすりつぶして調べていたようですが、日本魚類学会のガイドラインにもあるように、今の時代そんな極悪なことはいたしません。

そうやって、ようやく分かるタイリクバラタナゴ、ニッポンバラタナゴ、雑種の別。

中国大陸から日本のいずこに連れてこられて、交雑したとか、してないとか。

ここはどこ?わたしはだれ?タイリクバラタナゴの受難です。