淡水魚に優しい水路は…

身近にある水路、この3つの水路のうちよく見かけるのは、中央もしくは右の水路です。ともにコンクリート三面張りと言われる水路で、言葉の通り側面・底面ともコンクリートで平坦化された水路です。

中央の水路で、底部に砂もしくは泥が堆積していたり、水生植物帯があったり、堆積物の影響などで流れに緩急がつく場所や深みなどがあったりすると、カワムツやオイカワ、タモロコ、ミナミメダカなどの淡水魚が泳いでいたりするときがあります。

右側の水路は、必要な時にしか水を流さない水路で、水生生物にとっては死の水路です。水を流すか流さないかは、土地改良区、水利組合、農業者の判断に委ねられています。

水路には水量を操作する水門や堰がいたるところに設置されていて、水生生物の命はここで制御されます。

調査の結果から、条件に拠りますが、たとえ三面コンクリート張り水路でも、常時水が流れていて、河川などとの連結性が高い水路には、様々な淡水魚が生息している可能性が高いことが分かってきました。

右の水路でなく、常時水が流れる中央のような水路であれば、生物の多様性は低下しますが、ゼロにはならない場合が見られるということです。

多少の手間はかかるにしても、素掘り水路よりは、はるかに管理が容易です。今まで生き物の棲み処を奪い続けてきた免罪符として、せめて水路には常時水を流してほしいと水生生物に代わってお願いしたいです。

一方、左のような素掘りの水路は、今ではほとんど見ることができません。市街地で素掘りの水路が残るのは、神社やお寺のそばを流れる水路であったり、墓地の横を流れる水路であったり、たまたま基盤整備から外れ運よく残った水路であったりする場合です。素掘り水路は、ミナミメダカやドジョウなどが生息可能な水路です。

素掘り水路でも、何らかの原因で一度、淡水魚の生命環が途切れていたりすれば、回復には相当の時間を要したり、場合によっては回復しないこともあります。一度、失われた命は簡単には戻らない、もしくは戻らないということです。

日本列島には、約400種の汽水・淡水魚が生息していますが、環境省が作成したレッドリストでは、絶滅危惧種数が改訂の度に増加し、平成25年2月に公表した第4次レッドリストでは167種と、評価対象種に対する絶滅危惧種の割合が42%と分類群の中で最も高くなりました。これらの淡水魚は、河川のほか、水田、水路、ため池等、人間の活動により維持されている二次的自然を主な生息環境としていることから、人間活動の影響を受けやすく、戦後から現在に至る土地利用や人間活動の急激な変化等が、その生息環境を劣化・減少させた要因です。

淡水魚を取り巻く危機的な状況を打開し、淡水魚の生息環境を改善していくためには、土地改良区、水利組合、農業をされる方の協働、行政のリーダーシップが必要です。