おやにらみ - 在来集団の生息地は残り1?!

オヤニラミ Coreoperca kawamebari

そのフォルムから人気が高いオヤニラミ Coreoperca kawamebari。繁殖期は、4月下旬~9月で盛期は5月、ヨシなどの植物のしっかりした茎や葉に産卵します。雌の産卵後、卵を守り育てるのは雄で、産卵を終えた雌は追い払われます。全長10cmくらいの雌では2~3日ほどの間に約500粒の卵を産みます。

オヤニラミは、中讃の2河川で以前より生息していると考えられていますが、過去の生息状況の記録が乏しく、香川では見慣れない淡水魚なので、オヤニラミが生息していた事実が知られぬまま生息水域から姿を消していることが懸念されます。

オヤニラミは、河川や水路の改修、護岸工事、農薬使用や家庭排水の流入による水質悪化、ブルーギルやオオクチバスなど魚食性外来魚の食害などの影響で数を減らしていて、国レベルでは、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類に指定されています。

一方、東京都、愛知県、滋賀県などでは、国内の他地域産の放流されたオヤニラミが繁殖し、移入種問題も生じています。絶滅危惧種であると同時に局所的には国内外来種、もともとの自然分布地では生息が危ういのに、新天地では増えている…なんとも皮肉な現象です。

さて、県内2河川に残るオヤニラミですが、遺伝的集団解析の結果から1河川の集団は非在来のオヤニラミである可能性が高いことが分かりました。他方もその河川内で繁殖しているのではなく、ため池で再生産された個体が水路を伝って流れ落ちている可能性が高いことが先日の調査で示唆されました。

今後、水路内調査を続けると同時に、系統保全、さらなる遺伝的集団解析から香川県のオヤニラミにおける在来・非在来をより明確にすることが必要なようです。

引用文献
氏部崇之ほか.2021.香川県まんのう公園で採集されたオヤニラミの由来,香川生物(Kagawa Seibutsu)(48):7-13,2021-06