あめりかざりがに

先日の調査のことでした。濁ったため池や緩流域では、高い確率で採捕できるアメリカザリガニ。

他の生き物を傷つけてしまうため、アメリカザリガニ専用のバケツに保管しておくのですが、そのバケツの中で交尾を始めてしまいました。生命の危機を感じたのでしょうか。凄まじい環境適応力というか生命力というか、調査の手を止めてしばらく観察してしまいました。1回の産卵で抱く卵の数は200〜1000個、交尾した1〜3カ月後に産卵し、メスに守られ成長します。

名前の通り、アメリカ原産ですが、日本を含む世界各地へ移入され、分布を広げた外来種です。湖沼やため池、水田、公園の池など、多くの環境に適応しています。絶滅危惧種を含む水生昆虫や魚類を捕食するため、多くの生物に影響を及ぼし、貴重な生物の絶滅の一因となっています。水草を摂食、切断して水生植物群落も壊滅させ、淡水魚類の産卵場を奪っていきます。さらに、畦に穴を開けるなどの農業被害をもたらします。

しかしながら、そのフォルムの良さから、愛玩動物としては人気の種。令和3年8月に「外来生物対策のあり方検討会」においてとりまとめられた外来生物対策の今後のあり方に関する提言において、「アカミミガメやアメリカザリガニのように、我が国の生態系等に大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、飼養等を規制することによって、大量に遺棄される等の深刻な弊害が想定される侵略的外来種については、そうした弊害をできるだけ軽減させる形で、生態系等に係る被害の防止に資する規制の仕組みの構築や各種対策を進める必要がある」とされました。特定外来生物に指定しようにも、飼育数が多く、指定のとたん野外に放たれる恐れがあり、指定に考慮を要するということでしょうか。

本会調査でも、アメリカザリガニの侵入によって、ため池環境が激変した池が何個かあって、うちカワバタモロコの生息が危ぶまれる池まで存在します。

環境省 外来種問題を考える アメリカザリガニ https://www.env.go.jp/nature/amezari_mondai.html