知られていない淡水魚「おやにらみ」

香川では、その存在が知られていない淡水魚「おやにらみ」。

ペットショップではまあまあ見かけますが、香川由来の「おやにらみ」が細々と生き残っている事実はあまり知られていません。環境省カテゴリでも、 絶滅危惧ⅠB類(EN)すなわち、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種に指定されています。香川県カテゴリでは、絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に指定されていて、香川県内の希少野生生物(絶滅のおそれがある野生生物)のうち、特に保護を必要とする種を指定されています。指定希少野生生物は、生きている個体の捕獲、採取、殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という)が原則禁止されていて、違法に捕獲等した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が適用される…というスゴい希少な淡水魚です。

香川県では、現在2河川+1ため池に生息していて、1河川のオヤニラミは、非在来のオヤニラミ集団である可能性が高いと考えらています。もう1河川のオヤニラミも順調な再生産が維持されているとは言い難く、生息地のロケーションからして1ため池からの流れ落ち個体であることが、Takayuki UJIBE, Yuuki YAMADA, Masaaki KAWADA and Motohiro TAKAGI. 2021. Origin of Coreoperca kawamebari collected at Sanukimannopark in Kagawa Prefecture で示唆されています。そして残る1ため池の個体群が、香川県の在来オヤニラミ集団の可能性が高いことが指摘されました。

1ため池の個体群も盤石な生息基盤があるとは言い難く、まずこの「おやにらみ」という淡水魚を知ってもらい、人工繁殖も目指した生息域外保全に、国営讃岐まんのう公園と香川淡水魚研究会、香川県立高松桜井高等学校理学部が協働して取り組み始めました!

1月15日、国営讃岐まんのう公園自然生態園自然生態展示館に、世界中どこを探してもココだけ!香川由来の「おやにらみ」水槽を一般公開しました。国営讃岐まんのう公園自然生態園自然生態展示館は、公共施設の使命として、地元地域性のない熱帯魚のような生体だけのペットショップと変わらない展示ではなく、地域固有の生き物を一般の方々に知ってもらい、守っていくSDGsに則った啓発の取り組みをします!

オヤニラミ (Coreoperca kawamebari)は、スズキ目ケツギョ科オヤニラミ属に分類される淡水魚の一種です。全長6~12㎝、保津川、由良川より西の本州、四国北部、九州北部に分布しています。河川の中流域やその支流となる小川や用水路などに生息し、水が澄んで流れの穏やかな場所を好みます。甲殻類や水生昆虫、小型魚類などを食べる肉食性で、動くものには素早く反応して、大きな口で丸呑みします。繁殖期は4月~9月、植物の茎に約80個、1巣では250~1000個の卵を産みます。胸鰭で卵に水を送ったり、近づいた小動物を攻撃し追い払うなどして、オスは卵を保護します。

今はまだまだ子どもの個体で、1~2年後の繁殖を目指します。

河川や水路の改修・護岸工事、農薬使用や家庭排水の流入による水質悪化、ブルーギルやオオクチバスなど魚食性外来魚の定着などにより個体数を減らしているオヤニラミ。香川県では過去の生息状況の記録が乏しく、オヤニラミが生息していた事実が知られぬまま生息水域から姿を消していることが懸念されています。

ぜひ、この希少な「おやにらみ」に会いに来てください!