香川県の淡水魚類保全の問題点

 本県では淡水魚類の保全が十分に推進されているとは言い難い状況です。理由は、

1.行政が淡水魚類の保全に積極的でない。

 本県には指定希少野生生物という種指定があります。条例を見てみると、「香川県内の希少野生生物(絶滅のおそれがある野生生物)のうち、特に保護を必要とする種に指定されています。指定希少野生生物は、生きている個体の捕獲、採取、殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という)が原則禁止されていて、違法に捕獲等した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が適用されます」となっています。しかし、指定希少野生生物に指定されても、生息地保全、生息地保全が難しいケースは生息域外保全、密漁防止策や外来種対策などの積極的な保全策が執られるわけでもなく(主として財政上の理由から)、みんなでつくる自然史博物館・香川を委託先とする年1回程度以上の現地調査などにとどまっています。ニッポンバラタナゴの天然分布池にタイリクバラタナゴが放たれた池があっても駆除作業が行われるわけでもなく、カジカの生息地上流に河川構造物が建設されたとしても安定的生息を睨んだ継続的な生息地監視が行われるわけでもありません。

2.本県には、希少淡水魚の繁殖を担うことができる施設がない。

 本県には、日本動物園水族館協会が規定する繁殖賞を受賞するような取り組みを行う施設がありません。普及啓発のための展示にとどまっているのが現状です。本会は農業用灌漑池を利用したニッポンバラタナゴ、カワバタモロコの再生産を含む保全については約20年館続けていますが、水槽内繁殖などの生息域外保全は県条例や人手不足から難しい状況です。水族館や博物館などが積極的な取り組みを行うことが求められます。

 ここ数年淡水魚類を取り巻く環境(河川改修、渇水などの水不足、ため池の管理放棄など)が悪化し、数種についての絶滅危惧種が絶滅するであろう可能性が急速に高まっていることを、日々の調査で感じています。どうすればよいかという解決策は見出せませんが、少なくとも水辺や水の中への関心を高める、傷んだ水域環境に対して生き物たちが生息するための費用と労力を投じる、ということは必要です。