本会会員が、香川生物学会にて「香川県中東讃部におけるアカザ調査の記録」を発表しました。

本会会員が、香川生物学会にて「香川県中東讃部におけるアカザ調査の記録」を発表しました。

 アカザ Liobagrus reinii は,ナマズ目アカザ科アカザ属に分類される日本固有の淡水魚類である。全長 8~15 ㎝で,宮城県・秋田県以南の本州,四国,九州に分布する(川那部ほか,2005)。本種は水の比較的きれいな河川の上中流域の転石帯に生息する。礫底を好み,夜間
に活動することが多い(宮地ほか,1976)。水生昆虫などを捕食し,繁殖期の 5~6 月に,瀬の石の下に卵塊を産みつける(川那部ほか,2005)。近年,河川横断構造物の設置などによる生息地改変や河川工事などに伴う土砂の流入で浮石等の環境が保たれておらず生息個体
数や生息地が減少していることから(環境省,2014),絶滅危惧Ⅱ類に選定されている(環境省,2020)。県内の過去の調査では 4 河川より記録があるが,近年生息が確認できるのは高松地域と中讃の 3 河川であり,生息個体数も減少していることを指摘している(安芸・安芸,2021)。最近では香東川より本種の生息を記録している(岩部ほか,2022)。また,本種は遺伝的分化した 2 群が存在することが分かっており,この 2 群の両方が生息する河川もあることが知られている(Nakagawa et al.,2016)。本県における本種の遺伝的分化に関わる知見は集積されておらず,その集積が期待されるが,有効な保全策や保護活動が行われていないのが実情である。本種の生息状況を本調査によって明らかにし,その生息環境について考察することで本種の保護に貢献し,本種の本県における遺伝的分化を研究する手助けになることを目的とした。