「カワバタモロコ」予想はことごとく覆る

 カワバタモロコの定期調査、気温は5℃、冬に逆戻りだ、天気も雨でまったくの調査日和でない。最初の調査対象農業用灌漑池(以下、ため池と略記)の水温は11.95℃(水深10cm)なので、水底はさらに低いだろう。一度水底の水温も計測したいところだが、技術的というより資金的にハードルが高い。この水温であれば、これまでの経験上採捕できる魚は0だろうと予想していた。もんどりを20分間投入、20分以上投入すると初夏からはもんどりの中で死魚が出るため、調査条件統一のために投入時間は20分までと決めている。調査3区の採捕数0、調査2区は…カワバタモロコ144個体・モツゴ9個体、調査1区ではカワバタモロコ24個体、モツゴ17個体を確認した。

 日時、日照などによって各区で採捕される種と個体数は変化する。そのことも興味深いが、このため池はアメリカザリガニが2年前に侵入し、ヒシがほぼ消失した後、モツゴが激増、カワバタモロコは絶滅寸前に陥ったが、1年後はなぜかアメリカザリガニが確認できなくなり、ヒシが復活し、モツゴ<カワバタモロコ(もんどりによる採捕数で)の関係となっている。アメリカザリガニの駆除作業は一切していないのにだ。

 ため池のダイナミズムは面白い。魚が増えそうな池でも増えない池、魚がいなさそうな池でもいる池、アメリカザリガニが侵入して生態系が崩壊するため池としないため池、再生産が突然困難に陥るため池…多くの説明変数が、カワバタモロコの持続可能性を形作る。この多くの説明変数をまだまだつかみ切れていないために予想はことごとく覆る。