今年の定期調査もあと2×5回

 今年のカワバタモロコの定期調査がおそらく11月で終わる。毎月20地点の定点観測をし、すべての地点のトラップでの採捕数が0になったら調査終了し、論文にまとめる予定だ。毎月20地点を観測したら色々なことがわかった。たとえカワバタモロコが数100個体生息する生息地でも環境条件が適合しなくなれば瞬時に絶滅へと向かい、環境条件が適合すればたとえ数個体からも復活する生態系の奥深さだ。浅学で恐縮だが、数値解析を真面目に行い定量的な分析に努めたい。

 多くの淡水魚は経済的インセンティブを生まない、誰もが積極的に保全しようとはあまり考えない気の毒な存在だ。たとえ絶滅危惧種が生息する河川やため池でも、配慮の乏しい工事などの生息地改変が行われ、一定期間はその免罪符のような実効性の乏しい保全策が執られる、と言ったら言い過ぎだろうか。現実の課題として、本県のカジカ大卵型、オヤニラミ、ニッポンバラタナゴ、カワバタモロコは絶滅の淵に置かれている。誰かが保全してくれると言えば、Noだ。生息地の減少数から自明、保全したいなら数々の制約を解決し、自分が動くしかない、という結論に20余年の活動を通して分かった。

 今年は研究室に所属し、頼もしい仲間ができた。彼らなりに調査結果をまとめ、カワバタモロコが生きる環境について考えている。たとえそれが卒業論文のためだとしても、水族のことに理解を深めたエンジニアとして巣立っていくことは、これからの水圏生態系保全のためには大切なことだと思う。また、理学部生物班(通称、いきものがかり)に入部したいがために、本校を受験する生徒が現れてきたことも成果。声をあげることさえできない水族になり代わって、本県の淡水生態圏のことを真面目に考え、実効力をもって、生物多様性の保全のために、無知・無関心・無責任・ことなかれ主義な存在と進取果敢に戦う次世代が育ってくれたらいいな、と思う。

 オオクチバスやブルーギル、アメリカザリガニなどの侵略的外来種の侵入がなければ、カワバタモロコが、たぶん30年は持続可能な生息地は確認または確保した。来年度はオヤニラミとカジカ大卵型に取り組みたい。