ダムに沈む清流

香東川に椛川ダムというダムが建設されています。

椛川ダム建設の目的として、「流水の正常な機能の維持、本来河川が持っている機能を正常に維持(既得用水等の安定取水、地下水の維持、動植物の保護、流水の清潔の保持等)するために、渇水時でもダムから流水の補給を行い、これらの機能の維持を図ります」となっていますが、動植物の保護に貢献するのかと言われたら、動植物を犠牲にする方が多いと考えています。

なぜならば、ダムが建設され、清流が水没するエリアには、四国最後の個体群であり香川県絶滅危惧Ⅰ類であるカジカ大卵型が生息し、香川県絶滅危惧Ⅰ類であるナガレホトケドジョウが生息し、準絶滅危惧であるタカハヤが生息しています。椛川ダムの建設によって、ダム灌水区間のこれらの淡水魚は絶滅するからです。

加えて、流水の清潔の保持が達成されるのかと言えば達成されないと考えています。そのことは、ダムが建設された下流域を見れば一目瞭然です。

椛川ダムダム直下では以前豊富にみられたカワヨシノボリやカワムツでさえ、その生息が確認できなくなりました。15年前ダム工事の担当者に聞いたところ、生態系に配慮した工事をしますと言っていましたが、全くの嘘でした。

日本列島には、約400種の汽水・淡水魚が生息していますが、環境省が作成したレッドリストでは、絶滅危惧種数が改訂の度に増加し、平成25年2月に公表した第4次レッドリストでは167種と、評価対象種に対する絶滅危惧種の割合が42%と分類群の中で最も高くなりました。これらの淡水魚は人間活動の影響を受けやすく、戦後から現在に至る土地利用や人間活動の急激な変化等が淡水魚の生息環境を劣化・減少させた要因だと考えられています。

香東川は治水対策が進み、香東川が氾濫したのは昭和51年が最後だったかと記憶しています。それ以降も浸水被害が出ていますが、浸水を防ぐには支流の一つにすぎない場所でのダム建設よりも、水害に強い堤防を都市の再開発と一体化させた高規格堤防の建設や遊水池の確保、排水設備の充実の方が確実です。渇水対策にしても2008年に300万トンの水をためておける宝山湖という香川用水調整池が完成しました。節水意識が高まったこともあって、宝山湖完成以降、渇水による高松市の断水はありません。

生態系への配慮に乏しい、終わりのない大規模ダムや砂防ダムの建設が、確実に人間以外の数多くの日本の野生の生き物を死に追いやっています。そろそろ野生生物を守る取り組みについて、本気で考える時期に差しかかっているのではないでしょうか。

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