香川のニッポンバラタナゴに突きつけられている「弱さ」

野生動物の保護に携わっていると「遺伝的多様性」ということばをよく聞くようになりました。「遺伝的多様性」について詳しくは今回割愛しますが、近親交配によって遺伝的多様性が低下すると「病気に弱くなる」、「繁殖率が低下する」、「急激な環境の変化への対応力が低下する」といった問題が生じることが明らかになっています。このことを近交弱勢といいます。

ニッポンバラタナゴ香川のニッポンバラタナゴは3つの「弱さ」を突きつけられています。まずは外来種からの食害にあいやすいという「弱さ」。タイリクバラタナゴとの交雑の危険にさらされており、一度混ざると修正が効かない「弱さ」。そして、体質的な「弱さ」です。

香川のニッポンバラタナゴはため池という閉鎖水域に生息していることと、個体数の減少に伴う小集団化から遺伝的多様性が低下し、近交弱勢が進んでいることが疑われています。

ニッポンバラタナゴ体質的な「弱さ」は飼養してみて感じます。他種と混泳していると、ニッポンバラタナゴだけ病気になったり、エサにたどりつけずに死んでしまったりするケースが非常に目立つからです。

自然界では外来種との問題もあり、また状況が違うとは思いますが、飼育個体の状況を観察することで自然界の中でたくましく生きていけない理由がなんとなく分かる気がします。

香川のニッポンバラタナゴを保護するにあたって、遺伝的多様性を考慮しながらどのように保護していくのか。保全単位はどうするのか。遺伝的多様性を踏まえた保護活動を通して、これらの「弱さ」をどう克服していくのかが香川のニッポンバラタナゴに突きつけられている大きな課題です。