保護地区の水生生物調査
香川淡水魚研究会は、希少な生物が生息する地区の定期的な水生生物調査、保全活動を池主さんと合意のもとで行っています。
ニッポンバラタナゴ・カワバタモロコの保全池を調べました。調べた池では順調に産卵が進んでいて、両種の稚魚の泳出も目視で確認できました。長い梅雨で降水量が多かったことが良い方向に作用しているようです。
保全池の環境条件や生物相により、優占する魚種は異なります。
ヌマムツはコイ目コイ科クセノキプリス亜科に分類される淡水魚で、日本固有種です。東海地方以西の本州・四国・九州北部に分布します。愛媛県や山口県では、絶滅危惧IA類に選定され(愛媛県では特定希少野生動植物に指定)絶滅が強く危惧される地域がある反面、人為的な移入により関東地方に定着しています。
平野部の河川や水路を好み、香川県ではこうした場所に加え、ため池や丘陵地を流れる小さな河川で見られることもあります。
カワムツに似ていますが、臀鰭の条数が3棘9軟条でカワムツより1少ないこと、側線鱗が53以上でカワムツより多いことで同定できます。他にも、背鰭・胸鰭・腹鰭の色の入り方や成熟した雄の追星の出方にも違いがあります。横から観察すると違いが分かると思います。
フィールドに出ると、ヌマムツは減少傾向にあるように思います。生息場所が開発を受けやすいところと重なっており、その影響を受けているのでしょう。最近、ヌマムツの入っているため池の管理が行き届かず、水質や底質が悪化して見られなくなった箇所もありました。
開発や管理放棄が進み、環境の単調化が進むと絶滅が心配されるヌマムツ。本会では、保全池で再生産している集団を含め、本種の生息状況を引き続き注意深くモニタリングしていきます。