絶滅の恐れがある淡水魚類調査

オイカワ香川淡水魚研究会では、絶滅の恐れがある淡水魚類調査を行っています。これまで多くの希少な野生生物を含む生き物調査を行い、香川県などの関係機関に報告してきました。今回は、公益財団法人明治百年記念香川県青少年基金学生による企画提案活動支援事業「絶滅の恐れがある水生生物調査」として香川県立高松桜井高等学校理学部+αと協働して調査しました。

オイカワ今日の高松の最高気温は35℃、朝は曇っていて、いい調査日和だったのですが、10:00ごろから雲が切れて、ぐいぐいと気温が上昇していきます。熱中症にならないかと気をもみながらの調査でした。

高松桜井高校理学部+αのαの部員たちは、魚採りに関してはほぼ素人です。水面を眺めるとオイカワらしき魚影が多々群れていて、さぞかし簡単に捕まりそうです…が!、網を入れるとその期待は見事に裏切られまったく捕まりません。網を入れたところの右へ左へと巧みに逃げていきます。それどころか網を入れた瞬間に魚たちはほぼ散ってしまい、モクズガニ魚を採ることは無理そうです。

石をひっくり返してまず採集できたのはモクズガニでした。

甲幅は7~8cm、体重180gほどに成長します。成体は川に生息するモクズガニですが、幼生は塩分濃度の高い海でないと成長できません。そのため一生の間に海と河川の間を回遊する降河回遊の習性をもちます。同じ川にすむサワガニよりは下流域に棲みます。昼間は水中の石の下や石垣の隙間などに潜み、夜になると動きだす夜行性です。雌雄とも上流に行くほど大きく成長するため、大型の個体が採集されるようです。タモロコモクズガニは砂、泥、岩、転石、コンクリートなど様々な底質に出現し、底質に対する選好性は比較的弱いようです。カワニナなどの貝類、ミミズ、小魚、水生昆虫、植物などを捕食する雑食性です。秋になると成体は雌雄とも川を下り、河川の感潮域の下流部から海岸域にかけての潮間・潮下帯で交尾を行います。

理学部員が採集の仕方をひと通りレクチャーすると、しだいに採集技術も上達し、オイカワ・タモロコ・ミナミメダカ・カワヨシノボリ・オオシマドジョウ・チュウガタスジシマドジョウ・チュウガタスジシマドジョウカジカ大卵型稚魚が確認できました。

チュウガタスジシマドジョウは、環境省カテゴリー絶滅危惧Ⅱ類 、香川県カテゴリー準絶滅危惧種に分類されます。全長7~11cm、本州の瀬戸内海流入河川および一部の日本海流入河川、四国の徳島県桑野川水系から愛媛県重信川水系、九州の福岡県長狭川水系から城井川水系に至る瀬戸内海流入河川に分布します。流れの緩やかな河川中~下流域の砂泥底で見られます。主に川底の小動物や有機物をとる雑食性です。繁殖期は5~7月頃で、河川敷などの一時的水域を利用して産卵したり、オオシマドジョウ代掻き直後の水田の近くまで溯上し、水田付近の溝などに産卵するため、近年の水域環境の変化により生息地が減少しています。

この調査地でのオオシマドジョウ数:チュウガタスジシマドジョウ数=20:1ぐらいの割合でした。近年の河川改修などでは、底床がオオシマドジョウの生息に適しているように改変され、オオシマドジョウは生息域を拡げている印象がします。一方、段差障壁などによる水路ネットワークの連結度の低下によって、チュウガタスジシマドジョウは生息域を狭めているようです。カジカ大卵型調査結果をまとめて学会などで発表したいと考えています。

カジカ大卵型稚魚は上流側から流されてきたようでした。カジカ大卵型は、環境省カテゴリー準絶滅危惧、香川県カテゴリー絶滅危惧Ⅰ類に分類されます。カジカ大卵型は、一生を淡水で過ごすことから河川陸封型とも呼ばれています。全長10~15㎝、本州のほぼ全域と香川県、九州北西部に分布します。河川上流部の石礫底に生息しています。香川県では、ダム建設、河川改修によって絶滅の危機に瀕しています。小魚や川虫などを食べていて、カワヨシノボリ繁殖期の3月~6月には、瀬の石の裏側に、直径3~4mmのうすいオレンジ色をした卵を密集して産み付けます。浮石等の環境維持はもちろんのこと、工事に伴う土砂の流入で浮石が埋没しないような配慮が必要です。カジカ大卵型は、香川県内の希少野生生物(絶滅のおそれがある野生生物)のうち、特に保護を必要とする種に指定されています。指定希少野生生物は、生きている個体の捕獲、採取、殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という)が原則禁止されていて、違法に捕獲等した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が適用されます。

ミナミメダカ真夏・猛暑日が続いており、調査・魚体撮影中にも水温がすぐに上がってしまう+調査STAFFの疲労のため、思うように調査が進んでいませんが、継続的に調査していきたいと考えています。

明日は、公益財団法人明治百年記念香川県青少年基金 学生による企画提案活動支援事業 香川県立高松桜井高等学校理学部主催 子ども達と一緒に守る絶滅の恐れがある水生生物と水辺の観察会です。