標本は研究結果を保証する証拠

標本は、種または種類の模式標本として同定の拠り所となったり、対象物の分布や調査結果の証拠になります。研究結果を保証する証拠としての重要な役割(証拠標本)もあります。

個体変異や成長によっても変化が生じるため、単一の標本のみでは全体像をつかむことができません。標本を多く集めることで、その多様性変化の証拠となり、その分布や環境、さらに時代によるそれらの変化についても知ることができるようになります。

「分布のevidenceとして最低1個体は固定標本として残しておくことが不可欠です」と懇意にして頂いてる教授から勧められていることをきっかけに標本作製の1日でした。

標本作製鹿児島大学総合研究博物館出版の「魚類標本の作製と管理マニュアル」(本村浩之/編 )を指導書にして、解凍→洗浄→尾鰭の固定と作業を進めます。使用したのは昆虫針。状況に応じて0号(太さ 0.35 mm,長さ約 40 mm)~3号針(太さ 0.50 mm,長さ約 40 mm)を用いました。1人が作業、1人が指示と分業です。

「標本を博物館等で保管する上で重要な点が、後々(数百年レベルで)標本作製にしっかりと細部の形態を確認できるかどうかです。ホルマリン固定を推奨する理由として、展鰭ができ、筋肉組織がしっかりと固まることが挙げられます。ホルマリン固定であっても、鰭などが閉じたままであったり、体が曲がったまま固定されてしまった場合、標本作製後々の同定の再確認や形態観察の際に不都合が生じます」とご助言を頂いているので留意して作業しました。

次は、ホルマリンの塗布。ホルマリンは、ホルムアルデヒドの水溶液のことで、強力な架橋反応を起こすため生物にとって有害です。生物の組織標本作製のための固定・防腐処理に広く用いられています。原液、高濃度の希釈液からは、ホルムアルデヒドを含有した蒸気が発生するため、人体に有害であり、毒物及び劇物取締法で医薬用外劇物に指定されています。本会には毒物劇物取取扱責任者資格を保有するSTAFFが在籍しており一緒に作業。ドラフターの中で筆を使ってホルマリンの原液を塗布します。

標本作製ホルマリンを塗布した後、再度の洗浄を行って写真撮影。撮影はコンテストでも入賞経験のあるSTAFFがいるので手慣れた様子で撮っていきます。

撮影後は、標本の固定。魚類標本の固定には原液ホルマリンを10倍に希釈した溶液を使用します。10% ホルマリンに標本を完全に浸けて固定。魚の体はほぼ水分から成っているため、ホルマリン溶液が時間とともに希釈されていきます。そのために、定期的にホルマリン原液を追加する必要ありです。今回の作業はここまで。

処理が終わつた標本は、公的登録を依頼する運びとなっています。