チチブとヌマチチブ

チチブ(Tridentiger obscurus)は、 スズキ目ハゼ科ハゼ亜科チチブ属に分類される淡水魚の一種です。全長5~10㎝、河川の下流や汽水域に多く見られますが、淡水への適応性も高く、河川の中流域などでも見られます。海に下らずに、湖などに陸封されたものも知られています。雑食性で底性の小動物などのほか藻類なども食べます。繁殖期は5月~8月頃で、この時期の雄は体色が真っ黒になり、背びれの棘も長く伸びます。雌は明色となり、雄が縄張りを張った石の下などに産卵します。卵は雄が守り、ひと月ほどの間は浮遊生活をおくり、全長が13~14㎜程度になると底性生活をはじめます。

ヌマチチブヌマチチブ(Tridentiger brevispinis)は、 スズキ目ハゼ亜目ハゼ科チチブ属に分類される淡水魚の一種です。チチブに似ますが、頭部側面の白点がまばらであること、胸鰭基部に黄色横帯があり、そのなかに明瞭に分枝した橙色線があることなどで区別できます。全長5~15㎝、北海道から九州にかけての日本全国に分布します。河川の中流~下流域、湖沼、ため池、汽水域など、多様な水域に生息します。両側回遊魚ですが、容易に陸封されます。雑食性で主に付着藻類を食べます。繁殖期は春から夏で、転石の下や石垣の隙間などに産卵します。

河口域はチチブ、川の下流から上流にかけてはヌマチチブにすみ分けしていることが多いそうです。

この河川ではその傾向に反して、下流側にヌマチチブ、上流側にチチブらしき魚が生息していました。この生息地までは多数の堰があり、海から遡上してきたとすれば、かなりタフな魚です。

ヌマチチブの特徴は、

 〇第一背びれの暗赤色の線が2から3本あること

 ○胸びれの付け根に燈色の線あること

 ○ほほに青白い点がまばらにあること

チチブですが、個体を見ると、両種の特徴が入り交じり、どちらかと言えばチチブ?、といった印象です。

遺伝学的手法を用いた研究では、チチブとヌマチチブは交雑し、雑種ができることが分かってきました。交雑は自然状態で起こり、複数の地域でみられるようなので、チチブとヌマチチブは、外部形態で見分けがつかないかもしれません。

今後、チチブとヌマチチブの関係がどうなるのか、亜種や同一種となるのか、あるいは現状のまま2種に区別されていくのか、日本淡水魚の分類は奥が深そうです。