どんこ - 動きが緩慢な肉食魚
ドンコ Odontobutis obscura は、スズキ目ドンコ科ドンコ属に分類される淡水魚の一種、本県では河川上流域下部から下流域上部、ため池や用水路など幅広い水域で見られます。動きはたいてい緩慢で、水温が低い冬に捕獲すると動かないこともあり、これ生きてるの?と首をかしげたくなるような場面にも遭遇したりします。リリース時には俊敏に逃げていくときもありますが…
今日調査した河川は、ドンコ天国で1時間ちょっとで100個体は見つけたのではないかと思います。全長15cm程度の成魚から1cmにも満たない仔魚まで、安定して再生産が行われていました。砂泥底の環境を好むようで、抽水植物帯や落ち葉の堆積した場所などに数多く潜んでます。
動物食で生きた魚等を食べます。繁殖期は4~7月、オスは岩や倒木などの下面に産卵室をつくり、グーグーと大きな声を上げてメスを誘う習性があります。メスは産卵室の天井に米粒大の黄色い卵を産み付け、オスは孵化するまで卵を守ります。ドンコのかげにムギツクあり、ということでムギツクの生息を期待しましたがいませんでした。
淡水魚類調査の楽しさのひとつに地元住民との交流があります。筆者は地域住民を見つけると率先して声をかけることにしています。今日も「何がおるんな?」「昔はよっけ魚がおったのにな~」「ここらあたりには赤いドジョウがおるんじゃ」から始まって「夏にはオオムラサキが飛んでくるんぞ~」などといった話題も飛び交います。
バケツを覗いたおいちゃんは、「ドンコはな~、から揚げにしたら美味しいんじゃ~。昔はよく、から揚げにして食べよったんやけどな~」、ドンコがから揚げ?、カジカならともかく、ドンコがから揚げ?筆者は淡水魚食べない派なので、なおさら驚きです。しかし、そういう習慣も昔の話。昔のような清澄な水環境ではないなど、淡水魚を食べる習慣自体なくなっていってるようです。
「川の魚調べて何するんな?」もよく聞かれる質問。「調査結果は、RDB座長を通して、県に報告し、工事などの際に淡水魚の安定的生息に配慮してもらう」ことが目的です。工事などの生息地改変、マニアや業者の過剰な採集圧、オオクチバスやブルーギルなどの侵略的外来種による捕食、渇水時の水切れ、日本淡水魚の前途は多難です。採集魚は記録撮影などの後、すべてもとの場所にリリース、次回もお目にかかれることを期待して。