絶滅に一番か二番目に近い魚、顔はいかついけどデリケート-カジカ大卵型

香川県で絶滅に一番か二番に近い魚は、ニッポンバラタナゴでもカワバタモロコでもありません。香川県カテゴリーで絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に指定されているカジカ大卵型です。

整理しておきましょう。環境省レッドリスト2017カテゴリー(ランク)によると、

  環境省カテゴリー 香川県カテゴリー
カジカ大卵型 準絶滅危惧(NT) 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
ニッポンバラタナゴ 絶滅危惧ⅠA類(CR) 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
カワバタモロコ 絶滅危惧ⅠB類(EN) 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

 

カジカ大卵型全国的に見ると、ニッポンバラタナゴやカワバタモロコの方が、絶滅の恐れが高いような印象を受けます。カジカ大卵型は、全国的には準絶滅危惧 (NT) →現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種なので。ちなみに、絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) →絶滅の危機に瀕している種、となっています。

カジカ大卵型は、カジカ河川陸封型ともいい、その一生を淡水で完結させます。カジカの生息条件は、水がきれいで石礫底である清流です。そのような場所は、香川県にはほとんど残ってません。カジカこそ清流のシンボルなんです!

というわけで、香川県産カジカ大卵型は、大ピンチです。事実、今のカジカの生息域は局限的です。1河川のみの、ほんの限られた場所にしか棲んでいません。渇水で水が干上がったり、なんかの工事で石礫底環境が失われてしまうと生息、繁殖ができません。

乱暴な言い方をすれば、ため池性の淡水魚は、オオクチバスなどの違法放流で絶滅寸前になったとしても、同じようなため池に緊急避難すればなんとかなります。しかし、河川性の淡水魚は、香川県は自然度が高い河川が乏しいことも手伝って、どうにもならないのです。ため池みたいな閉鎖水域と違って、河川は開かれた水域なので、日本魚類学会自然保護委員会から示されている生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドラインに適合するかの問題がかなり残ります。

ダム香川淡水魚研究会ができた頃は、カジカが比較的安定している水域がありました。しかし、そこにダム建設が始まって、もはやカジカが棲める場所ではなくなり、カジカの一大生息地が失われてしまいました。絶滅の恐れのある野生生物の宝庫で、ナガレホトケドジョウがいたり、タカハヤがいたり、カスミサンショウウオがいたりして素敵な場所でした。

ダムができたら、たぶんコイ(世界の侵略的外来種ワースト100)か、下手をすればオオクチバスが違法放流されて、最悪の水域となるのでしょう。

あと、香川産カジカ大卵型は大きな価値を持ちます。それは、香川産カジカ大卵型が、唯一のカジカ大卵型四国個体群だからです。

「山溪ハンディ図鑑 増補改訂 日本の淡水魚」では、すでにカジカ大卵型の自然分布域として四国は外れていました。これが暗示とならないように、香川淡水魚研究会としても行動をとっていきたいです。

絶滅寸前のカジカ大卵型。もし、香川でカジカ大卵型を見つけた時にはそっと見守っててあげてください。

カジカ大卵型は、香川県内の希少野生生物(絶滅のおそれがある野生生物)のうち、特に保護を必要とする種を指定されています。指定希少野生生物は、生きている個体の捕獲、採取、殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という)が原則禁止されていて、違法に捕獲等した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が適用されます。

香川淡水魚研究会では、本会に所属する香川県野生生物保護推進員の指導の下で調査を行っています。

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