ヒナモロコの悲劇
2020年1月に、「Large-scale hybridization of Japanese populations of Hinamoroko, Aphyocypris chinensis, with A. kikuchii introduced from Taiwan」という論文が出版されました。
ポイントを書くと、「日本のヒナモロコの野外および主要な飼育集団のすべてを国外集団とともに解析したところ、現存する野外・飼育集団のすべてが台湾産の同属種との交雑集団か後者そのものとなっていることが判明した」そうです。
原因は「2000年前後に流通を始めた台湾産種の保全系統への混入が最も疑われる」ということのようです。詳しくは、Laboratory of Freshwater Fish Elology and Evolution Katsutoshi Watanabe ( Kyoto Univ.) をご参照ください。
おそらくいずれかの過程で、台湾産ヒナモロコが、保全している日本産ヒナモロコに混入したのでしょう。
2003年3月8日、現地の方にヒナモロコが生息する水路を案内して頂き、野生のヒナモロコを撮影させて頂いたことがあります。1994年に筑後川水系巨瀬川に注ぐ農業用水路で80尾のヒナモロコが見つかり保全活動が始まったので、この撮影した個体は日本産ヒナモロコか交雑ヒナモロコか微妙なところです。
そう考えると、日本にも分布し、日本以外にも分布する淡水魚が流通している現状は、多大な危険性を秘めていることになります。タイリクバラタナゴしかり、コイしかり…
流通する淡水魚を野外に放つということは、多大な代償を払う危険性がある。しかもその原因を作る人は、善意か悪意かは別にして、その責任の重さを知る由もないという可能性が高い、ということになりそうです。
Laboratory of Freshwater Fish Elology and Evolution Katsutoshi Watanabe ( Kyoto Univ.) https://sites.google.com/site/fwfwatanak/home