底樋、命をはぐくみます
この構造物が何だか分かるでしょうか?ヒントはため池です。
とは言え、平野部のため池で見かけることはほとんどなくなりました。
底樋(そこひ)と呼ばれる、ため池の水を田畑へと流す排水栓です。利用されなくなって湿地化したため池で姿を見せました。
昔はこのように木で作られた底樋が数多くありました。
秋になって農閑期になると、底樋を抜きヘドロを含む泥水を田畑に流し出すことで、ため池を掃除するとともにに田畑に栄養分を供給していました。池干しと呼ばれるこの作業によって、ため池に残った生き物が、雨水や谷戸の水などが新しく入った水環境で増殖し、多くの新たな命を誕生させています。
今では、耕作されなくなった田畑が増え、利用されないため池が増えてきました。ため池の水が利用されないことで底樋が詰まり、池干しができない池も多くあります。
長い間、池の水が入れ替わらないと富栄養化が進み、カワバタモロコやニッポンバラタナゴにとって棲みにくい水環境へと変化していきます。
適切に人の手が入ることによって維持される里山の生態系を二次的自然といいます。
人の手が入らくなることで、一見、自然への干渉がなくなり野生生物が守られるようにも見えますが、メダカやカワバタモロコ、ニッポンバラタナゴはこの二次的自然を生活の場としていて、適切な人の関わりが欠かせません。
底樋と呼ばれる排水栓。水を循環させ、命を育む大切な道具です。