ちょっきん、ちょっきん、生命の循環を断ち切ります-アメリカザリガニ

アメリカザリガニ誰もが知ってるアメリカザリガニ、名前の通りアメリカ合衆国を原産地とするザリガニの一種です。もともとは、ウシガエルのエサとして、1927年に持ち込まれました。その後、養殖池から逃げ出したアメリカザリガニが、日本全国に分布域を広げました。

でっかいハサミ、真っ赤なボディとイセエビを彷彿させる美しいフォルム、子ども達の人気の生き物ではないでしょうか。筆者も小学生の頃は、近くの農業用水路でアメリカザリガニをせっせと捕まえては飼育してました。

アメリカザリガニ小さい水槽で淡水魚と同居させるとよいことは起こりませんが、60cm以上の水槽でコイやブルーギル(当時は飼育規制はありませんでした)と同居させてもさほど悲劇が起こるわけでもなく、あまり淡水魚には影響を与えないのかな?、と子ども心に思ってました。

香川淡水魚研究会ができた頃は、アメリカザリガニが在来生態系に与えるインパクトは、オオクチバスやブルーギルほどにはないと思っていたのですが、そうではありませんでした。

アメリカザリガニが優占する池アメリカザリガニの水生植物に対する食害は凄まじい!水生植物が認められた池でも、小規模な池であればあるほど、アメリカザリガニが侵入すれば、やわらかめの水草は切り取られ、消失していきます。その結果、水生植物を住処、産卵床とするメダカやイトトンボなどのヤゴは大きく数を減らします。

またドブガイなどの貝類も大きな被害を受けます。野外調査でアメリカザリガニが大増殖した池に、ハサミでこじ開けられたいうなドブガイの亡骸が多数ありました。ドブガイが全滅するとニッポンバラタナゴは全滅します。

アメリカザリガニアメリカザリガニが優占している池の多くは、水質浄化の仕事をする水草が消え失せたことも手伝ってか、水質汚濁が進んでいて、生物相は貧相でした。

当時は、アメリカザリガニと池の植生の関係にあまり気を留めなったので記録に残しませんでしたが、今考えると記録をとっておけばよかったと後悔しています。

そういった池の環境改変の犯人をアメリカザリガニだけのせいにするつもりありません。生態系に無配慮なコンクリート護岸工事や底樋を抜いて池干しが行われなくなった、など多くの原因があります。

しかしながら、ちょっきん、ちょっきん、水草を切り、水草帯をゆりかごにする淡水魚や水生昆虫の生命循環の輪を断ち切ることに加担していることは間違いなさそうです。