恐怖のU字溝
U字溝という構造物です。香川では、素掘りの用水路がどんどんU字溝に置き換わっていってます。このU字溝、田畑で水を必要としない時期には水を流さず乾ききっています。当然のことながら水生生物はなにもいません。U字溝を見慣れてくるとU字溝水路が当たり前のように思えてくるのが恐ろしいところです。
このU字溝は著しく、多くの水生生物を絶滅に追いやっています。水が流れた時でも、直線化されたことにより流速は早く、底部も砂も泥もないため水草も生えません。もっとも水を流さない時期が大半なので生えたとしても生き残る余地はありません。カエルなどはその段差障壁のために産卵にチャレンジすることも困難です。4月~5月終令となったゲンジボタルの幼虫は、雨の日の夜に尾足あたりを発光させながら上陸し、草の根本などにもぐりサナギになりますが、上陸もできません。多くの生き物にとってU字溝は恐怖です。
では、U字溝になる前はどのような水路だったのでしょうか?
U字溝になる前は、土堀りの自然度の高い水路でした。メダカやカワムツ、ヨシノボリなどが泳ぎ、トンボのヤゴなども生息し、カエルが見られ、ヤナギモやキクモなどが生える、生物多様性が良好な状態で保たれている場所でした。
近年、都市部で網をもって生き物採集に出かける子どもたちを見ることはめっきりなくなりました。絶滅危惧種川ガキなどという話題も出ましたが、生き物採集をする子どもたちも絶滅危惧レベル。U字溝で生き物採集などできるわけがないので当然のことです。生き物はペットショップで買うもの、ということが当たり前になっていくのも時代の必然かもしれません。自然の生き物に興味を示さなくなるのも時代の必然かもしれません。
日本の人口増加も止まり、平野部では田んぼが宅地に代わっていき、圃場整備の必要のない場所が多くなってきている時期に差し掛かっています。せめて、今ある湧水や自然度の高い水環境は、子ども達の遊び場、自然と触れ合える場としても保全していく必要があると感じています。
生き物にとって恐怖のU字溝、安価で安易な工事に走るのではなく、工事するにしても生態系に配慮した工法・構造物が必要だと多くの生き物が叫んでいるに違いありません。
棲み処を追われ死んだ生き物、いなくなった生き物は簡単には戻ってきません。